星野リゾートの教科書から学ぶビジネス成功への良書13選
みなさま、夏休みを楽しんでおりますか?夏休みを温泉で満喫した@ayaya1024でございませう。
夏休み前に部長から、ビジネス(経営)について勉強しておけと渡された本がこちら。
星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則 by 中沢 康彦
軽井沢の老舗温泉旅館から、日本各地でリゾートを運営する企業へ飛躍した星野リゾート。
その成長の背景には、星野佳路社長が実践した「教科書通りの経営」がある。
星野流・教科書の生かし方について、まとめる。
星野流・教科書の生かし方
Step1:本を探す
書店に1冊しかないような古典的な本などが役に立つ。
Step2:読む
1行ずつ理解し、分からない部分を残さず、何度でも読む。
Step3:実践する
理論をつまみ食いしないで、100%教科書通りにやってみる。
星野社長が参考にする教科書の多くは、米国のビジネススクールで教える教授陣が書いたものである。
教科書通りの経営をする利点として、以下をあげている。
- 教科書に書かれている理論は、「経営の定石」であり、正しい判断の確立が高くなる。
- 経営判断の根拠や基準となる理論により、行動のぶれが少なくなり、自分の下した決断に自信がもてる。
- 事例調査から法則を見つけ出された理論により、社員に対して、決断の理由を明快に説明できる。
- 状況改善に必要な思い切った経営判断を最低限のリスクで実行することができる
教科書が中小企業の経営に役立つ2つのポイント
- 教科書の内容を社内に浸透させやすく、理論に沿った方向転換もしやすい点。
- 経営リスクを減らす意義が大きい点。
中小企業の経営者はリスクに対して常に敏感であるべきだ。
教科書を経営に生かし、誤った経営判断をするリスクを減らすことは有益だ。
Step1:本を探す
教科書として役立つかどうかは、規模、業界、そして企業が置かれている環境などによって違う面もある。記号の成長段階によって、今は役に立たなくても数年後に生かせる本もある。
だから教科書通りの経営の第一歩は、どの本が経営に役立つかを見極めることだ。
自分の目で確かめながら教科書を探すことが大切だ。
書棚に1冊ずつだけ置いてあるような本は、流行の波を乗り越えて、体系化された理論として生き残り、定石として一般的に認知されたことを示している。こういう古典的な理論の中にこそ、経営に役立つメッセージがある。だから、星野社長は、書店の平積みになっている本を選ばずに1冊しかないような古典的な本を選ぶ。
Step2:読む
書かれている理論を理解すると同時に、「自社にどのように当てはめればいいのか」「どこを変える必要があるのか」と考えながら読む。自社の具体的な悩みを考えながら読んでいると、頭の中が次第に整理されていき、やがて打つべき対策が見えてくる。そして、思いついた自社の打ち手をそのページに書き込むことが重要だ。
Step3:実践する
100%教科書通りにやってみることが重要だ。例えば、ある戦略を実践するには「3つの対策が必要だ」と書かれていたら、1つや2つでなく、3つすべてに徹底的に取り組む。そうすることによって初めて教科書の理論が効果を生む。
うまくいかないときには戦略を微調整することを考えるが、その判断は慎重にする必要がある。「効果が出るには時間がまだ不足している」「きちんと教科書通りにしていない」という理由で成果が出ていない場合は、戦略を変える必要はない。そんなときに作戦変更することは深い霧の中に入っていくようなものだ。
微調整する前に、教科書の戦略を1つずつ確認し、なぜ成果が出ないのか、しっかり考える。何度も教科書を読み返して、それをマニュアルとして忠実に実践する。微調整をするのは、すべてを教科書通りにやり切ってからである。
自分の直感力を信じられない時に、教科書は自らの経営判断の根拠となり、自身を持って頑張る勇気を与えてくれるのである。
以下は、星野社長が参考にした教科書のエッセンスである。
1.『競争の戦略』
- 企業が競争力を高めるためには、競合するライバルの動向に気を配る必要がある。
- 企業の基本的な競争戦略には、「コストリーダシップ」「差別化」「集中」の3つがある。
- 業界構造の成熟度に応じて、競争戦略を考えることで、ライバルに勝つ。
- ライバルの動向を見極めることで、競争を避ける戦略を取ることもできる。
- 新規参入の際には、先行するライバルの戦略を見極める。
2.『コトラーのマーケティング・マネジメント基本編』
コトラーのマーケティング・マネジメント 基本編 by フィリップ・コトラー
- 自社の戦略を立てるには、競合する他社との関係を知ることが重要である。
- 企業は市場での地位に基づいて、「リーダー」「チャレンジャー」「フォロワー」「ニッチャー」に分けられる。
- 市場での地位によって、企業の戦略は異なる。
- リーダーは、トップシェア企業として、「市場規模の拡大」「市場シェアの保持・拡大」などが重要な戦略となる。
- チャレンジャーは、市場シェア2番手の企業として、シェアを拡大するためにリーダーや同規模の会社を攻撃する。
- フォロワーも市場シェア2番手だが、波風を立てずに「リーダーをどのように追走するか」がポイントになる。
- フォロワーの戦略は報われない場合も少なくない。
- ニッチャーは、大きな市場でフォロワーになるのではなく、顧客、品質、価格、サービスを絞り込んだ小さな市場でトップに立つ戦略を立てる。
3.『The Myth of Excellence』
The Myth of Excellence: Why Great Companies Never Try to Be the Best at Everything by Fred Crawford,Ryan Mathews
- サービスや製品の品質で差別化ができないとき、「アクセス」を高めることによって、他社と差別化ができる。
- アクセスを高めるためには、お客様との関係を3段階に分けて考える。
- 第1段階では、お客様が急いでいるときに、スピーディーに買うことのできるサービスと情報を提供する。
- 第2段階では、「ボタン1つで買える」など、お客様が使い勝手よくアクセスができるようにする。
- 第3段階では、お客様に対して「今こういうものを買ってはいかがですか」などの提案をする。
4.『売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則』
売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則 by アル ライズ,ジャック トラウト
- ある市場に最初に参入することで、他社よりも優位に立つことができる。
- あるカテゴリーでトップになれない場合、カテゴリーを見直し、トップに立てるような新しいカテゴリーをつくる。
- 見込み客の心をつかむためには、焦点を絞り込んだ販売戦略が重要になる。
- 焦点を絞り込んだ販売戦略が効果を発揮するまでには、時間がかかる。
- 製品ラインアップの拡張は短期的にうまくいっても、長期的にはマイナスに働く。
5.『いかに「サービス」を収益化するか』
いかに「サービス」を収益化するか (Harvard Business Review Anthology)
- 製造業の製品には保証書がある。だが、サービスには保証書がない。何らかの保証が必要ではないか。
- 「サービスの100%保証システム」とは、サービスが約束通りに提供されることを保証するシステムである
- サービス内容が約束通りでない場合、顧客がサービスに対して支払った金額を返金する。
- 顧客が返金を求める理由について、付帯条件や留保条件をつけない。また返金請求の仕組みを簡単なものにする。
- このシステムを導入することで、顧客は安心してサービスを受けることができる。
- サービスを提供する社員は、このシステムによって自分のサービスに対して責任感を持つ。
- 既にサービス内容に定評がある場合、サービス保証システムは不要である。
- 保証制度を悪用するお客様がいたとしても、その不正が与える損害は、保証システムによる利益に比べると、ずっと小さい。
6.『真実の瞬間』
真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか by ヤン カールソン
- お客様はスタッフと接する短い時間=「真実の瞬間」の中で、企業を評価する。
- 「真実の瞬間」の質を引き上げることで、企業の競争力を高める。
- 経営者はスタッフの対応力を上げるために、分かりやすいビジョンを示し、必要な情報を共有する。
- 顧客のニーズに迅速に対応するために、階層の少ない組織をつくることが大切。
- 最前線のスタッフは、顧客1人ひとりのニーズと問題に対応する権限を持つ。
- サービス業だけでなく、さまざまな業種でお客様対応の重要性が高まっている。
8.『ブランド・エクイティ戦略』
ブランド・エクイティ戦略―競争優位をつくりだす名前、シンボル、スローガン by David A. Aaker
- ブランドには資産としての価値がある。その価値は時間とともに変わっていく面があるため、積極的に管理する必要がある。
- ブランドの価値を決める要素は次の5つである。
- 認知=どれだけ知られているか
- 知覚品質=お客様がどのように感じるか
- 連想=ブランドについて思い浮かべること
- ロイヤルティ=リピーターとなってくれるかどうか
- 他のブランド資産=トレードマークなど
- ブランド力を高めることによって、企業は競争を優位に進め、収益性を高めることができる。
- ブランドの価値を高めるためには、長期的な視点に立った首尾一貫した取り組みが必要である。
- 目先の売り上げや利益を追うだけでは、ブランドの価値は高められない。お客様の期待を裏切ると、ブランドの価値は下がる。
9.『ビジョナリー・カンパニー』
ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則 by James C. Collins,Jerry I. Porras
- ビジョナリー・カンパニーとは、時代を超え、際立った存在であり続ける企業である。
- ビジョナリー・カンパニーには、カリスマ的な経営者は不要である。
- ビジョナリー・カンパニーには、単なる金儲けを超えた基本的価値観と目的意識がある。
- 基本理念の中身として不可欠な要素はない。社員の指針となり、活力を与えることが重要である。
- 基本理念は時代や流行に左右されてはいけない。大切なのは、維持しながら進歩を促す点である。
- 基本理念を組織の隅々にまで浸透させることが重要である。
10.『1分間顧客サービス』
1分間顧客サービス―熱狂的ファンをつくる3つの秘訣 by Ken Blanchard,Sheldon Bowles
- 顧客をつかむには、満足させるのでは不十分で、熱狂的なファンを作る必要がある。
- そのためには自分たちが目指す製品・サービスの中身を自分たちで決める。
- お客様の声を受け止め、サービスを高めていく。
- お客様の要求が自分たちの目指す製品・サービスと合わない場合、その要求を無視する。
- 1%ずつでもいいので、目指す目標に向かって一貫性を持って進み続ける。
11.『1分間エンパワーメント』
1分間エンパワーメント―人と組織が生まれ変わる3つの秘訣 by Ken Blanchard
- エンパワーメントとは、人が本来持つパワーを引き出すことである。
- 社員のパワーを引き出して、1人ひとりのやる気を高めることで、業績向上につなげる。
- 社員のエンパワーメントには3つのステップを繰り返す。
- 仕事に必要な情報を提供し、責任を持って働く気持ちにする。
- 仕事の目的、目標などを明確にし、自分で管理する領域を作る。
- 階層化した組織をやめ、自分たちで統率するチームに変える。
- エンパワーメントの実現には困難な時期が来ることもある。困難を切り抜ける覚悟を固めておくこと。
12.『後世への最大遺物 デンマルク国の話』
後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫) by 内村 鑑三
- 後の世代に何を残すのかについて、しっかり考えておく必要がある。
- お金、事業、思想を残すのは重要だが、うまくいかないこともある。
- 「勇ましい高尚なる生涯」を残すことは誰にでもできる。
- それは弱い者を助け、品性を修練する堂々とした生き方である。
- こうした生き方こそが後の世代に伝える最大要素である。
まとめ
本書は、「抱えていた課題」、「解決への取り組み」、「多分野への応用」という構成で、上記の教科書のエッセンスを取り入れた実践事例を豊富に紹介していただいた。とても感動し、目から鱗が落ちた。星野社長をはじめ、本書出版の関係者の皆様に心より感謝を申し上げたい。
星野社長は、100%教科書通りにやってみて、「振り返り」に全力を注ぐ。その「振り返り」があったからこそ、星野社長は自分の判断を信じ、あきらめず、あせらず、経営改革を続けたと思う。「教科書通りの経営」をやり切る姿勢が会社を強くし、人を強くした。